こちらのお噺はRさんよりお寄せいただき、私夢宮が編纂したお噺となります。
これは私の知り合いのRさんという女性から聞いたお話です。
今から5年ほど前の話ですかな。
Rさん、何をするにも気だるくってね、鬱々と毎日辛い日々を過ごしていたそうです。
ご自身の体調不良と合わせるように、当時、住んでいたアパートの部屋で妙なことが頻繁に起きましてね。
部屋には誰もいないはずのに、ご飯支度をしてると後ろに人が通った気配がするだとか、
窓も開けておらず、風もないのに別室の芳香剤の香りがふわっとして風を感じるだとか…
落ちるはずのないところにおいた物がボトッ!て落ちたりねぇ。
とにかく部屋に何かいる感じがして
嫌だなぁ~怖いなぁ~って毎日思っていました。
完全に起きているときではないのですが・・・レム睡眠ってやつですか、なんとなーく、意識はある半覚醒の状態ですな。
Rさんが寝室で休んでいると、
カチャ
玄関の扉が開いた。
すると、誰かが部屋に入ってきたような感じがする。
旦那さんかなぁとも思ったんですが、まだ仕事中でこんな時間に帰ってくるはずはないんです。
ひった ひった ひった ひった
フローリングの廊下を、素足でもって寝室の方に向かってくる足音がする。
ズーッ 寝室の引き戸が開く音がした。
「ああどうしよう、入ってきちゃった」
Rさん、もう怖くて怖くてぐーっと目をつむって、布団をかぶった。
足音がベッドの方にどんどん近づいてくる。
はぁ はぁ
何者かの息遣いが、被ってる布団のすぐ向こうで聞こえる。
はぁ はぁ
決して体には触れてはこないんですが、一枚の布を挟んだ向こうに確実に何かがいるんだ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。どっか行ってください。
必死に念じ続けるんですが、気配は消えない。
そんな状況に耐え切れなくなって、Rさんいつの間にか気を失っちゃったそうです。
その後も、数か月に渡って、おなじような怪異が家の中で続いていたんですが、誰にも相談することができずにね、「気のせいだ、気のせいだ」と自分に言い聞かせて過ごしていましたよ。
厄年ってあるじゃないですか、男では25歳、42歳、61歳、女では19歳、33歳、37歳、61歳ですかな。
Rさん、ちょうど本厄の年でしてね。有名な某神社に厄払いに行く予定を立てていたんです。
「女のすすり泣きの真似」
厄払いに行く数日前ですかな、左耳から女のすすり泣きのような声が聞こえてきたんです。
耳をふさいでも、イヤホンで音楽を聴いていても、耳の内側っていうのかなぁ、頭の中に直接聞こえてくるっていうか、とにかく何をしていても常に聞こえてくるんですよ。
「女のすすり泣きの真似」
四六時中ずっとですよ?
今までずっと我慢してたRさんですが、さすがにこれにはまいっちゃった。
厄払い当日、いつもはこんなことはしないんですが、塩と日本酒を入れたお風呂に入ってみそぎをしてから神社へと向かった。
変なことが続いてますから、少しでも身を清めておこうかと思ってね。
厄払いを行ってる最中、紙の人形を体にこすりつけるんですがね、こすりつけながらRさん
「どうか今周りで起きているおかしな事がすべて消え去りますように。どうか神様お願いします、お願いします。」
ってつよく念じながら紙の人形をこすりつけました。
そして、滞りなく厄払いの儀式がおわり、神社の境内を歩いていると、あることに気が付いた。
あれ?例の女のすすり泣きが聞こえない。
あれだけ朝から晩までずーっと聞こえていたのに。
もう全く聞こえないんだ。
それ以来、部屋での妙な気配もほとんどなくなりました。たまに感じても、なぜだか怖いと言う感情もわかなくなったそうです。
すすり泣きのような耳鳴りは、厄払い後から一切ない。
もしかしたら霊などは関係なく、耳鳴りがしていただけかもしれませんがね。厄払いしたことにより、気持ちが楽になり感じなくなっただけかもしれません。
今までは、厄払いっていうのは、昔からの文化・風習なだけで、ゲン担ぎみたいなもんだろうな、なんて考えていました。
実際ご利益なんて、あまり信じていませんでしたし、一応厄年だからしておこう。くらいの軽い気持ちでいました。
しかし、厄払いをしてからというもの怖いことや変なことがパッタリなくなったので、厄払いってホントに効果があるんだ。神様ってホントにいて力貸してくれるんだ。と実感した出来事でした。
「夢宮さん、あなた神社のお賽銭はいつも1円しかあげないっていってましたよね?
たまには、奮発した方がいいですよ。」
Rさん、言ってましたよ。