お手紙見ますと中々食糧不足のようですね。米の新潟も困ったものですね。しかし南方で戦う先輩のことを考えたら、ぜいたくは言えぬ訳です。
今ベットの中で家を思いながら書くのも又ひとしおですよ。
正月には、恒仁、昌威、圭介にお年玉に何か送りたいと思いますから、欲しいものを言ってよこさして下さい。10円程度のものなら買えますから。
特に圭介にはよく機嫌をとって、余りおこらせないようにして下さい。皆男では皆戦死ですから妹の一人ぐらい生まれませんかね。
相変わらず内職でしょうが、余り無理なさらぬよう、追々送金も致しますから。
規則で手紙出せずいつも葉書で失礼します。 幸宣
なつかしの母さんへ
拝啓
たびたびのおたよりうれしく拝見致しました。この前の便箋7枚の手紙を見ては涙がとめどなくほゝを伝わりました。
何回も々々もくりかえして読みました。金おくりましたが、こんなによろこんで頂けるとは思いませんでした。神様などそなへなくてもよろしいですから、すぐ用立ててください。少し金持ちらしくやって下さい。財布が底ぬけにならぬ様一ケ月に一回は必ず補給します。
前にも言った通りもう誰の点検も要せず、すぐ自分で封切って見るのですから、財布がからになりそうでしたら、すぐ知らして下さい。
俸給35円、加俸30円、22日に貰います。食費、被服代はいらぬですぞ。小遣いだけで65円ですぞ。古い者は女郎買いなど行きますが、我輩は絶対行かぬつもりです。酒は飲むが煙草やビールは好かんですよ。
私は貯金はこちらでたくさんやっていますから、送った金はじゃんじゃん使ってください。そこぬけ財布にならぬ様にですね。甘い物などは充分配給になりますが、出来た時は、即ちあるときは作ったついでに郷土を思い出す餅やぼたもち、ちまきだんごなど、折にふれ無理せぬ程度に隊宛てお送りください。又下宿でもよろしいですが、10日に一辺の外出ではちょっと長いです。
隊なら夕食後は果汁のんだり、菓子食べたりする時間があります。この間戦友からするめを貰いました。送ってもらったのだそうです。小包などは自分で受け取りに行きます。
みかん着いたそうで何よりです。出来たらもっと送りましょう。
玉ちゃんにも小遣い出来るだけ送りますからお嫁に行く日の貯金にね。
お母さんの書いてよこされたことも、近いうちにあるかも知れません。
こんど金が自由になったらゆっくりと面会にこられないですか。やがては泊まりもありますし、24時間のやすみもありますからゆっくり話も出来ますし、共に寝ることも出来るわけです。
汽車に酔はなければよいのだがなぁ、トランク要るなら送ってもよいです。
ではお体大切に。
なつかしの母上様 かあちゃんよ・・・・・。
神風特攻・葉桜隊、昭和19年10月30日比島方面に於て戦死。20才