早池峰から出て東北の方、宮古の海に流れ込む川を閉伊川(へいがわ)というんですな 。その流域はすなわち下閉伊郡でございます。
遠野の町の中で、今は池の端という家の先代の主人が、宮古に行った帰り、この川の原台の淵というあたりを通ったとき、若い女がいて、主人に一通の手紙を托したんです。
遠野の町の後ろにある、物見山の中腹にある沼に行って、ぱちぱちと手を叩けば、宛名の人が出て来ますから、と言う。
主人は、請け合いはしましたが、道中これが気にかかってあれこれ思い悩んでいると、ひとりの巡礼僧と行き合った。
巡礼僧は、この手紙を開いて読んでみたそうです。僧侶が言うには、 「これを持っていったらそなたの身に大きな災いがあるだろう」「書き換えて渡したほうがいい 」と、そして、僧侶は主人に書き換えた別の手紙を渡したんですな。
主人はこれを持って沼に行って、若い女に教えられたとおりに手を叩くと、なんと若い女が現れて、手紙を受け取ってね、 「御礼ですわ」と、とても小さな石臼をくれたんです。
この小さな石臼が大変不思議なものでね。米を一粒入れて、ぐるぐると回せば、下から黄金が飛び出る。この宝物の力でその家はやや裕福になったが、妻が欲深くてね、一度に沢山の米をつかみ入れちゃった。
すると、石臼はひとりでに回って、ついには毎朝主人がこの石臼に供えていた水の、小さな窪みへと溜まっていた中へ、するすると滑り込んで、消えてしまった。
その水たまりは、後に小さな池になって、今も家の傍らにある。その家の名を「池の端」というのも、こういう謂れがあったからなんですなぁ。
注釈
一
この話に似た物語が西洋にもあります。偶然の一致でしょうかな。