【現代語訳】おくのほそ道 #6 ~那須 黒羽~ 【松尾芭蕉】

那須、今でいう栃木県の黒羽というところに知人がいるので、日光から那須野を通ってまっすぐに行こうとしました。
ずっと遠くに一つの村が見えたので、そこを目指している内に、雨が降り出して日も暮れてしまった。
農家に一夜の宿を借りることにして、夜が明けるとまた野原の道を歩き続けた。そこにね、放し飼いされている馬がいたんですよ。その近くで草を刈っていた男に、歩き疲れて困っていると相談したところ、田舎の農夫とはいえど人の情けを知らないわけではなかった。
『どうしましょうか。この那須野は野道が縦横に分かれていて、初めての慣れていない旅人では道を間違ってしまう。それでは気の毒ですので、この馬を貸してあげましょう。この馬が止まった所で返してくれればいいですよ。』と馬を貸してくれた。

ふと気が付くと小さい子どもが二人、馬の後ろを付いて走ってきた。
一人は少女で名を聞くと、少女は『かさね』と答えました。田舎では珍しい雅な響きの名前だったので、曾良が一句ひらめいた。

かさねとは 八重撫子(やえなでしこ)の 名なるべし  曾良

え?意味がわからない?
では、わかりやすいように現代語でお話ししましょうかな。

「女性には夏に咲く撫子になぞらえた名前が多いものだが、「かさね」という少女の名前は、花びらが重なって優雅に咲いた八重の撫子がイメージされるなぁ」

間もなく人里に着いたので、馬を借りた代金を馬の鞍壺に結び付けて馬を返しました。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です