鮒おじさん【洒落怖】
小学校4年生の夏休みのことで、今でもよく覚えてる。 川と古墳の堀をつないでる細い用水路があって、そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。 3時頃から始めたんだけど、いつになくたくさん釣れるので面白くてやめられ […]
小学校4年生の夏休みのことで、今でもよく覚えてる。 川と古墳の堀をつないでる細い用水路があって、そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。 3時頃から始めたんだけど、いつになくたくさん釣れるので面白くてやめられ […]
おれはやっとのことで十階の床をふんで汗を拭った。 そこの天井は途方もなく高かった。全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、つめたい漆喰で固めあげられてゐるのかわからなかった。 (さうだ。こ […]
これは、いまから、四年まえの話である。私が伊豆の三島の知り合いのうちの二階で一夏を暮し、ロマネスクという小説を書いていたころの話である。或る夜、酔いながら自転車に乗りまちを走って、怪我をした。右足のく […]
患者は手術の麻酔から醒めて私の顔を見た。 右手に厚ぼったく繃帯が巻いてあったが、手首を切断されていることは、少しも知らない。 彼は名のあるピアニストだから、右手首がなくなったことは致命傷であった。 […]
北の海の方にすんでいたかもめは、ふとして思いたって南の方へと飛んできました。途中でにぎやかな街が下の方にあるのを見ました。そこにはおほりがあって、水がなみなみと青く、あふれるばかりでありましたから、し […]
俺はサッパリなんだけど、 俺の母方の家系は、 どうやら見える人が多いようだ。 お袋はちょいちょい目撃談を語ってくれる。 お袋の話は特に恐ろしいものではないの で敢えて省く。 今日はじいさんの話だ。 俺 […]
登場人物はすべて仮名にしておきますよ。 去年まで俺がすんでいたアパートはコの字の形をしている 3階建てのエレベーター無で、204号室を使っていた。 自分の玄関からは正面に201号室が見える。 201号 […]
黒髪山、あぁこれは日光の男体山のことですがね、霞がかかっていましたが、残雪がまだ白く残っています。 まずは旅の連れの曾良の歌を聞いて下さい。 剃り捨てて 黒髪山に 衣更(ころもがえ) 曾良 なんて歌 […]
Homme libre, toujours tu che’riras la mer. Baudelaire. 自由の人よ。君は常に海を愛せん。 ボオドレエル。 一 昨日《きのふ […]
「信じてください刑事さん。殺すつもりなんて決してなかったんです」 木瀬伸也が逮捕されて10時間後、 ようやく落ち着きを取り戻した彼が発した第一声がこれだった。 木瀬の話は、まず彼がここ最近、 いかに経 […]