これは私が中学生の頃の体験だ。
この頃部活で帰りがいつも18時くらいだった。
秋にも中旬になると夕焼けが一層深くなり闇が橙色を消すように覆い出す時間。
私の自宅は学校から5分も掛からない
よく友人から羨ましがられたものだ。
学校から出るとちょっとした
国道に出るが国道とは言っても
道幅は狭く車通りは異常に多い。
まるで抜け道のような感じなのだ。
学校があるからだろう、手押し信号機がある。
押せば数秒で渡れる仕組みになっているためそこに子供が溜まる事はあまりない。
その信号機に向けて歩みを進めていると信号機を渡った先に
先に出た友人が私をじーっっと見つめ待っていた。
その友人の横に見たことのない女性が一緒に居る。
お母さん?お姉さんなんかいないはずだから…
なんて考えながら少し歩みを早めた。
すると友人がスッーーと右手を自分自身の前に突き出し掌を私に向けた。
何やってんだろ?
そう思ったものの気にも止めず進む。
友人は掌を動かすことなく不動なのに対し横に居るお母さんは
笑顔で私に手を振っている。
その満面の笑みに釣られて私もややはにかみながら手を小さく振り返した。
軽く息を切らせ信号機の押しボタンを押すと青に変わる瞬間に友人が私に猛ダッシュして来たかと思うと腕を掴んだ。
信号機のすぐ横に同級生のおばあちゃんがやってる小さなスーパーがある
友人は何も言わずにそこに私を掴んだまま駆け込んだ。
店に入る瞬間、耳元で
『邪魔しやがって!』
と怒ったような叫び声にも似た低い声がした。
店の中で友人がこう話してくれた。
『隣に女の人が見えたでしょ?もしかして手振ってなかった?あれたぶん幽霊だと思う。私はもう渡ってたから無事なんだけどこの後、梅ちゃんが来るって思ったから誘うつもりかもって思ってさ、来ちゃダメーって手を出したけど…』
手を振りながらあの信号を走り抜けていたら今頃、私は存在しないのかもしれない。
信号機で立ち止まり押しボタンを押せたのは不動のまま掌を向け続けてくれた友人の姿が奇妙だったからだ。
やはり持つべきは頼りになる友人である。

