この話は私が中2の秋の事。
秋と言っても限りなく冬に近い秋
この頃になると夕方は一時で
直ぐに闇が迫ってくる。
その時間帯には不思議な体験をよくする。
太陽と月は生と死に例える神話もいくつもある。
何かが入れ替わるほんの一時
この日は二者面談の日で
担任と生徒で15分程度
進路や人間関係、勉強の話をする。
自分の番は終わり
次に私の友人が受けていた。
一緒に帰ろうと約束していたので廊下で待つことになる。
私の学校は築130年
かなり年季が入っている古い学校と言える。
見た目は現代風に塗り替えられているが中はまだ木造部分が残っている。
その代表が廊下なのだ。
木目が分かる板を何枚か張り付けた廊下
所々に穴が空いてる。
当時は第二次ベビーブームで
私の学校も1300人以上生徒がいるマンモス校だっため
教室はたくさんあったし
木造の廊下もかなり長いものだった。
夕闇が迫る中、壁に背をつけ長い長い廊下を一直線に望める位置に腰かけていた。
教室からは担任と友人のボソボソと話し声がし、遠くからは野球部の声が聞こえていた。
ただ何となく長い長い廊下をジッと見つめていると
廊下に空いた小さな穴から何かが出ている。
不規則に動く何か。
何だろう?何かいる…
立ち上がり近付くがよく見えない。
更に近付きその何かの真上から覗いてみたら
それは
『指』なのだ。
人差し指が出ている。
『えっ!………………』
思わず後退りしたが、目が離せない。
ウネウネと動く人差し指
そのまま元居た場所まで静かに離れた。
すると教室のドアが勢いよく開き
中から担任と友人が談笑しながら出てきた。
私は思わず
『先生?この廊下の下って空洞なんですか?今ね、ほらあの穴から指が出てたんです』
と、先生も友人もキョトンとした顔で
『………そんなバカな何か見間違えたんだよ。廊下の下になんかどうやって入れるのよ!もしかして夢見てた?』
と一笑されたのだ。
夢?…いやちゃんと起きてたしちゃんと見た…
夕暮れの薄暗い廊下だから断言は出来なかったが
あれは間違いなく人の指だった。
友人は帰りしなに笑いながら
『人の指なら引っ張ってみたらよかったのに!』
と言ったが恐ろしくてとても出来るわけがない。
見えない人には分からないだろうが
何か、よく、分からない、もの。
これが一番怖いわけです。
本当に人が潜んでるかもしれない。
毎日歩く廊下の下に…
人じゃなければ一体何が居たのでしょう…
毎日生活するすぐ側に何かがいる恐怖
夕闇ってそんな体験をしやすい時間帯なのかもしれませんね。